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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
地下洞
アンドリュウ・ガーヴ 出版月: 1961年01月 平均: 6.50点 書評数: 4件

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早川書房
1961年01月

No.4 9点 人並由真 2021/01/16 06:30
(ネタバレなし)
 1951年8月の英国。労働党の下院議員であり、地元ウェスト・カンブリアン地区の支持を集める39歳の政治家ローレンス・クイルター。彼は愛妻ジュリーの旅行中に自分の実家の古文書を整理し、一枚の図面を発見する。それはローレンスの曾祖父ジョゼフが19世紀の半ばに書き残した、実家の広大な所有地の地下にある洞窟のスケッチだった。ローレンスは、知己の青年教師でアマチュアながらエキスパートの洞窟探検家であるピーター・アンスティを招聘。二人だけでこの広大な地下洞の探索に赴くが、そこで彼らを待っていたのは思いもかけない現実だった。

 1952年の英国作品。
 2013年にミステリマガジンが特大号で「ポケミス60周年記念特集」を組んだことがあり、当時のミステリ界の識者がそれぞれ「マイポケミス・ベスト3」をあげていた。そんななかで、この作品に一票を投じた参加者がひとりいて、その事がずっと頭の片隅にひっかかっていた(本書を読んだあとで該当のHMMの特集を改めて調べてみると、この作品を推したのは、書評家の小池啓介であった)。
 
 その際の特集アンケートに寄せられたコメントが、どうにもかなり仰々しかったので、これはなんかあるのかと期待。
 長らく入手の機会を伺っていたが、ようやく今月、古書を安く(200円)買えた。
 それで読んでみると、物語は三部構成。ローレンス主役の第一部から始まり、ストーリーを綴る視点はやがて……(中略)。
 全編のリーダビリティは最高で、それぞれのパートをこの上なく敷居の低い感じで読み進める。
(しかし序盤を読み始めた時点では、ガーヴ、ハモンド・イネス風の本格自然派冒険小説に挑戦か? とも一瞬だけ考えたが、まったく予想はハズれた(笑)。)

 そして終盤まで読んで……(中略)。いや、これは、本当に(中略)。

 前述のミステリマガジンの小池啓介のコメントからまた引用するが、そこには
「そして真相の破壊力といえば、なんといっても『地下洞』だろう。ガーヴと同名の作家が書いたとしか思えない怪作中の怪作」
 ……とあり、その物言いに「あー」と、納得。
 とはいえ個人的には、かつてガーヴの<あの作品>を深夜に読んでいてぶっとんだ記憶もある。だから評者などはコレ(本作『地下洞』)をガーヴの作品だと素直に受け入れても、そんなに違和感はない。
 むしろガーヴは<あの作品>に並ぶ(中略)を、すくなくともここでもう一回はやってくれていたんだね~という深い感慨を抱く。

 なんというか<あのシリーズ探偵もの>の<あの連作短編のうちのあの一本>みたいに「底が抜けた」ショックを感じた。いや、サプライズの成分はまるでちがうのが、パワフルさでは負けず劣らず、である。

 ただまあ、なんやこれ、と思う人も多そうだな(笑)。ある種のバカミスっぽさもあるし。その辺の感覚で頭が冷えてしまう人だと、評価が下がるかも。
 
 ということで実質8点くらいだけれど、個人的には大ウケした、という意味合いで、あえてこの評点を授けておく。
 今後この作品を読んだ人が何人か、5~6点どまりの評点を並べるかもしれんけれど、そういう評価がくるのも予見して、前もって対抗してつけておく<カウンター的な高得点>というニュアンスもあるのです(笑)。

No.3 6点 ことは 2019/08/29 01:01
これもガーヴらしく3部構成。
事件発生、恋愛サスペンス、そして……。
1部の洞窟描写は味がある。いいね。
2部の恋愛サスペンス、悪くない。でも1部からの引き続きとしては、違う方向に行っている感が……。
と思ったら、3部でそっちの方向?!
なんだ、この違うベクトルの話を3つ繋げた話は。嫌いじゃないけど。1部が一番好きかな。

No.2 5点 こう 2010/07/19 01:22
 ガーヴの作品はワンパターンですがそれで安心して読める所も個人的にはあったのですがこの作品は既読作品10数作の中では異色作でした。ストーリーの都合上途中で主人公が交代している印象がありますがガーヴ作品の場合(犯人のケースもありますが)主人公に感情移入できないと作品として成功とは言えないと思いますのでその点も十分ではないと思います。
 ラストもかなりの荒唐無稽感があります。

No.1 6点 kanamori 2010/04/22 18:01
自然界を舞台に巻き込まれ型サスペンスを量産したガーヴは、ディック・フランシスと並んで英国式冒険スリラー作家の典型と言えるかもしれません。
本書も、財宝探しのための地下洞での冒険で幕を開け、ある秘密を抱えた主人公と妻との心理的サスペンスへとつながる所まではいつものプロットなんですが、終盤とてつもない展開が待っています。
ガーヴの小説は、ある程度結末が予想できるものが多く、ミステリとして甘い点が不満でしたが、この作品はいい意味で予想を裏切っています。


アンドリュウ・ガーヴ
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